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​燦〈さんか〉

よさこい_210918_6.jpg

【蕾】

物静かな秋の大地に蕾あり。

その蕾は今か今かと開花を待ち望み、

まるで心の昂りを抑えきれないようだ。

 

【開花】

やがてその蕾は、紅葉染まる秋の大地

に季節外れな薄桃色の花を咲かせてい

く。しかし、赤色の大地に堂々と咲い

たその桜は人々に感動を与え、魅了し

ていった。

 

【冬の刻】

季節は移ろぎ桜が咲いたこの地にも、

やがて冬が訪れる。紅葉していた木々

はその葉を散らし、桜の花も無抵抗に

散ってゆく。色とりどりだった地は見

る影もなく、空から降る雪が大地を白

く塗り替えてく。

 

【吹雪】

風は強く吹き、雪はその降る勢いを増

していく。静かな時もつかの間、この

地に吹雪が跋扈する。吹き荒ぶる風は

木々をなぎ倒し、豪雪は有相無相を白

く埋め尽くす。そんな中吹雪に負けず

静かに蕾を付けていった樹があった。

 

【春の訪れ】

吹雪は去り、周囲も暖かくなっていき、積もっていた雪は徐々に溶けていく。長く地を領した冬が老いたかの如く次々と散ってゆく。地面が露わになったとき、小鳥のさえずりと共に緑色が現れる。秋とは違った彩を見せる頃、その蕾は今か今かとその時を待っていた。

 

【開花の時】

吹雪の厳しさを乗り越えこの上なく美しい満開の花を咲かせる。

その情景は心のうちに眠る、桜の記憶を呼びおこした。

さあ、宴の始まりだ。

秋とは比べ物にならないほど、桜一面に広がる世界に人々は喜びとともに溺れていった。

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